はじめに
私たちは、青森県外ヶ浜町平舘で育ちました。
海が近く、風の音がよく聞こえる町です。
姉の真碧は写真を、妹の莉碧は絵を続けてきました。
表現のかたちは違っていても、気づけばいつも、同じものを見ていたように思います。
言葉にならない気配や、記憶の端に残る感触。
写るものよりも、写らないものに心が引かれてきました。
この展示は、私たち姉妹が初めて一緒につくる場です。 2026年2月、東京で「序章」をひらき、
4月には青森県立美術館で「本編」を迎えます。
写真と絵画。
それぞれの方法で見つめてきた時間が、同じ空間に並びます。
桜田 真碧
1998年、青森県外ヶ浜町平舘生まれ。
幼少期より「ひとり」に敏感で、ことばや写真に“居場所”を見出してきた桜田真碧は、SNSや映像が日常を覆う2020年代において、“見えないもの”に耳をすます写真家である。
彼女の作品は一貫して、気配や余白といった“写らないもの”に焦点を当ててきた。撮ることは、関わることであり、生きることと地続きにあるという信念のもと、撮らない時間にも等しく命を注いでいる。
不在を見つめるまなざし。“写らないもの”にこそ、在るということを信じる態度。そして同時に、写真がすべてを写せるわけではないことを、深く知っている立ち居。それは、彼女の写真そのものが持つやさしさであり、強さでもある。
桜田 莉碧
美術作家(絵画・ドローイング)
2003年、青森県外ヶ浜町平舘生まれ。
幼少期から、絵が生きがい。身近な記憶や家族の物語をモチーフに、オイルパステル画・油画・鉛筆画を中心に作品を制作している。本展が初の大規模展示となる。
家族の記憶に触れるなかで立ち上がる「気配」や「痕跡」をテーマに、細やかな線の重なりによって、静けさのある画面を描き出している。言葉では語りきれない時間の積層を、線のリズムで表現することを試みている。
開催に向けて
父から、母が倒れたという電話を受けたときのことを、今でもはっきり覚えています。
その瞬間から、
「彼女が息を吹き返しても、そうでなくても、母の展示をしよう」
そう心の中で決めていました。
母が亡くなってから数日後、その想いを妹に伝えると、
「私も一緒にやりたい」と言ってくれました。
それが、この展示のはじまりです。
題材は、あまりにも個人的でした。
どこまでを作品として差し出すのか、
二人で何度も立ち止まり、その距離を測り続けました。
感情が先に溢れてしまう日もあり、
向き合うこと自体が、心や体に負荷をかける時間でもありました。
それでも、「いまの私たちにしかできない表現は何か」 「姉妹だからこそ、形にできることは何か」
問い直しながら、少しずつ前に進んできた一年でした。
届けたい想い
記憶は、私たちが思っているよりも、ずっと曖昧で、揺らぎ続けるものだと思います。
だからこそ、すべてを語り切るのではなく、
観る人それぞれが、自分自身の記憶を重ねられる余白を残したいと考えました。
この展示は、決して「私たちのママ」だけを見ていただく場ではありません。
あなたにとっての“大切なひと”を、そっと思い浮かべられる場所でありたい。
作品の前に立つ時間が、
自分自身や、誰かへの想いに静かに触れるきっかけになれば。
そんな願いを込めて、この展示をひらきます。
開催情報

序章 | 東京
開催期間:2026年2月21日(土)~ 2月23日(月・祝)
開催時間:12:00 ~ 19:00
開催会場:GALLERY IRO 1F
会場住所:東京都武蔵野市吉祥寺本町1-37-7-101

本編 | 青森
開催期間:2026年4月18日(土)~ 4月19日(日)
開催時間:10:00 ~ 17:00
開催会場:青森県立美術館 コミュニティギャラリーA・B
会場住所:青森県青森市安田近野185

