MAGAZINE
MAGAZINE
MAGAZINE

©︎ James Lontoc
独自の視点で写真表現を追求する人物へのインタビューを通じて、創作の原点や思想、制作プロセスを掘り下げ、世界中のフォトグラファー・フォトメディアに新たなインスピレーションを届けます。
フィリピン・メトロマニラを拠点に活動する写真家 / ライター、James Lontoc。日々を生きることそのものから写真を引き出し、長期プロジェクト『Sack Tap』では、自身の男性性や家族から受け継いだもの、成長のなかで問い直してきた価値観を見つめています。
現在は『Sack Tap』の書籍化に向けて編集とシークエンスに取り組む一方、Flint Photo Collectiveの共同設立者として、フィリピンの写真コミュニティにも関わっています。
今回の「10の質問」を通して、人生を日記のように記録する姿勢、失敗を受け入れる視点、そして物語を誠実に伝えることへの思いに迫ります。
©︎ James Lontoc
James Lontoc
フィリピン・メトロマニラを拠点に活動する写真家 / ライター。人生を模索するように、日記的なアプローチで撮影を続けている。現在は、男性性を見つめた長期プロジェクト『Sack Tap』の書籍化を進行中。Flint Photo Collective共同設立者。創作活動と並行し、マーケティングの仕事にも携わる。
Instagram : @lontoccc
写真を撮り始めたきっかけというよりも、どこから写真を引き出しているのかと考えると、それはただ「人生」なのだと思います。私は日記を書くように写真を撮っています。
ときには、男性性を見つめる『Sack Tap』のような長期プロジェクトになることもありますが、多くの場合、そこまで深いものではありません。写真は、人生を経験し、起きていることへ意識を向けるための方法です。
©︎ James Lontoc
現在は、何年分もの写真を見返し、それらが一緒になったときに何を語るのかを考えながら、『Sack Tap』を書籍にするための編集とシークエンスに取り組んでいます。同時に、特別な目的を設けず、好きな人たちと時間を過ごしながらポートレートを撮ることも続けています。
『Sack Tap』は、自分自身が男性であることをめぐる作品です。男性的な視覚に何が含まれ、何が受け継がれ、何が問い直されるのか。私は答えを示すことよりも、問いを投げかけることに関心があります。
このプロジェクト以外で扱っているのは、人生そのものです。プレッシャー、痛み、喜び、愛、受け継がれるもの。育った環境、そしてその影響に抗いながら、あるいはその影響を受けながら、自分がどのような人間になっていくのか。
©︎ James Lontoc
最初からテーマを説明しようとして撮影するわけではありません。目の前にあるものを撮り続けるうちに、自分が何度も立ち返るもの、撮らずにはいられないもの、家族や自分自身の男性性について考え続けていることが、少しずつパターンとして現れてきます。
偶然と居心地の悪さ、その両方が作品に入り込んできます。2023年の〈Angkor Photo Workshop〉で『Sack Tap』に取り組んだ際、メンターのAntoine D'Agataから、重量挙げ、格闘技、女性をナンパすることなど、自分が典型的に”マッチョ”だと思うものを挙げ、実際に一つずつ試して、それが本当にそうなのか確かめるよう促されました。それは、自分一人では計画できなかった方法で、コンフォートゾーンの外へ押し出されるような経験でした。
©︎ James Lontoc
それ以外では、撮る、保存する、文脈とともに見返す、編集して並べる、発表する、という基本的なリズムで制作しています。ただ、直感が最も働くのは、写真を見返す段階です。
なぜ撮ったのかを理解するまで、ある写真が何か月も眠ることがあります。足りなかった文脈を与えてくれるのは、メンターや見知らぬ人、あるいは時間そのものなのかもしれません。
ときには、問い直したい、あるいは追求したいアイデアがあります。別のときには、ただ写真を撮り、その場にいるという日々の習慣が原動力になります。そして多くの場合、必要なのは制作ではなく休むことです。私はそれを「外へ放つために、まず満たし直すこと」だと考えています。
©︎ James Lontoc
創作には波があり、私は、制作から離れる静かな時期に抗うことをやめました。以前は撮っていないことに罪悪感を覚えていましたが、今では休息も別のものではなく、同じプロセスの一部だと理解しています。
私を動かしているのは絶え間なく燃える炎ではなく、呼吸に近いものです。吸って、吐いて、また吸って、吐く。そして、次に制作する季節が整ったときにやってくると信じています。
正直に言うと、お気に入りの一枚はありません。この写真を選んだのは、最も優れた写真だからではなく、「壊れた写真」だからです。
©︎ James Lontoc
これはフィルムの最初のコマです。露出は正しかったと思いますが、フィルムが正常に巻き上げられているか不安になり、確認するために裏蓋を開けたことで光漏れが起きました。
さらに、その日はレンズの絞りが一段から動かなくなっていました。つまりこの写真は、別の技術的な失敗を防ごうとした結果生まれた、偶然に近い技術的失敗なのです。
それでも、この一枚は完全な物語を伝えています。それは、私の実際の制作方法にも近いと思います。機材も含め、写真が何を与えてくれるのかを自分で選べるとは限りません。ときには、うまくいかなかった一枚が最も正直な写真になるのです。
AIの時代における写真について、特別に強い意見があるわけではありません。写真は以前から、芸術のなかの「真ん中の子」のように感じられてきたからです。私にとって大切なのは、それをどう使うかです。写真は人生を経験するための方法であり、その瞬間にいて記録する方法であり、あとから記憶へ戻るための方法でもあります。
©︎ James Lontoc
生成AIが高度になり、日常的な存在になるほど、その役割は弱まるのではなく、むしろ私のなかで生き生きとしています。機械がほとんど何でも説得力のあるイメージとして生成できるなら、自分が実際に生きた瞬間と結びついた写真は、別の意味を持ち始めます。それは、より偽ることが難しいものです。
この問いが私にとって重要なのは、フィリピンの写真シーンが分断されているからです。さまざまな派閥やグループがあり、率直に言えば、言い争いやエゴの衝突も少なくありません。
だからこそ、〈Fotomoto〉が異なるコミュニティを同じ場所へ集めたり、メトロマニラ以外の写真家に光を当てたりする姿には、ほかの場所以上の意味を感じます。それは、閉鎖的なまとまりへ向かう傾向に抗う活動だからです。
草の根のグループである〈Raw and Untitled〉や、Flintにも同じ可能性を感じています。〈Flint〉を始めた理由の一つは、この活動に関わるほかの人々と競争したり、門戸を閉ざしたりする必要のない場所をつくりたいと思ったことでした。
©︎ James Lontoc
刺激を与えてくれる優れた実践者は数え切れないほどいて、その多くは〈Instagram〉で検索すればすぐに出会えます。身近な東南アジアに絞るなら、まず思い浮かぶのは、バンコクの〈Natthaya Thaidecha〉と〈Daniel Huete〉です。二人が一緒に、またそれぞれに制作する作品を、私は何度も見返しています。
ほかにも、ホーチミンの〈Duy Dao〉、〈Angkor Photo Workshop〉でメンターの一人だったシンガポールの〈Sean Lee〉。少し範囲を広げると、カトマンズの〈Arhant Shrestha〉、中国の〈214〉と〈Ziyi Le〉がいます。
彼らに惹かれるのは、共通するスタイルがあるからではありません。それぞれが自分自身の個人的な経験と、その土地に固有のものから制作しているからです。私は、これからもそのような写真を見続けたいと思っています。
物語を伝えることです。長期の写真プロジェクトでも、短い作品でも、文章でも、映像でも、私にとって一貫しているのはそれです。
物語が必要とするものによってメディアは変わりますが、その根底にある衝動は変わりません。私は写真という形式そのものに忠誠を誓っているというよりも、何かを、そして誰かを、誠実に物語れるほど深く理解しようとする行為に忠実でありたいと思っています。どのような道具を使うことになっても、その力を磨き続けたいです。
©︎ James Lontoc
創作が、いつも深い意味を持つとは限りません。一方で、自分でもその奥行きや広がりを捉えきれないほど、大きな意味を持つこともあります。その両方が真実で、同じ一週間のなかに共存することさえあります。
大切なのは、どちらの時期にもつくり続け、成長し続け、自分自身であり続けることです。深い季節が来るまで、作品をつくる意味を証明しようと待つ必要はありません。
そして、軽やかな季節に不安になる必要もないのです。
47 マガジン
世界各地で独自の写真表現を追求するフォトグラファーやフォトメディアへのインタビュー企画。「10の質問」を通して、写真との出会いや創作の原点、作品に込められた想いに迫り、世界中のクリエイターへ新たな視点とインスピレーションを届けます。









