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By cizucu ·

世界は、無数のローカルの積み重ねでできています。
各地で〈photo poster project〉を開くなかで、その土地のリアリティは、行ってみなければわからないと、いつも実感します。可能な限り、自分たちの足で確かめておきたいと思っています。そのために、写真を通して旅をしています。
少し前のことです。秋に入り、少し涼しくなったところで、今年の夏に台北を訪ねたときのことを振り返ってみました。
霧に包まれた台北101を眺めながら、台湾に来たのだと、あらためて感じます。高層の輪郭は白くかすみ、湿った空気が肌にまとわりつきます。
『PHOTO GO 攝影上桌(シェインシャンジュオ)』は、写真のつくり手と、見る人や評論する人が、顔を合わせて話すための場です。
名前の「攝影上桌」は「写真をテーブルに載せる」ことを意味します。台湾の宴席文化「辦桌(バントォ)」のように、作家が作品をテーブルの上に広げ、来場者と向き合います。壁に飾って眺めるためではなく、同じテーブルで言葉を交わし、響き合うための場でした。2018年に台南の水交社ではじまり、今回で7回目です。
訪ねたのは2026年6月26日から28日まで、台北市万華区の剝皮寮(ボーピーリャオ)歴史街区で開かれていました。公募で選ばれた30人の作家による展示に加え、〈PAPER MATTER〉と共同ではじめて開かれた写真集賞、写真集の展示や講座も、同じ会場に並んでいました。
『PHOTO GO 攝影上桌』の会場となった、台北・万華区の〈剝皮寮歴史街区〉。
テーブルを囲む形のよさは、作家とその場で話せることにあります。壁に並べて眺めるだけでは聞きにくい、選び方や並べ方も、同じテーブルなら顔を合わせて尋ねられます。
写真を撮り、選び、一冊にまとめた人が、本を開いたまま説明していました。見る人もページをめくりながら、気になったところをその場で返していました。
赤いテーブルを囲み、写真を介して言葉を交わす。『PHOTO GO』では、作家と来場者が同じ卓につく。
〈新泰興被服廠(XinTaiXing)〉のテーブルに並ぶ写真と写真集。〈Global Interview Project〉で紹介した活動に、台北の会場で出会った。
2026年の『PHOTO GO』では、〈PAPER MATTER〉と共同で、台湾ではじめての写真集賞『PHOTO GO / PAPER MATTER Photobook Awards』が開かれました。専門家の選考を経た入選作は会場で展示され、このあと巡回展も予定されています。
展示は三つの組に分かれていました。入選作品を並べる「年度の本」、女性の写真集における身体・記憶・日常を扱う組、そして写真集の研究と出版の流れをたどる組です。丸テーブルの上にも、写真集が広げられていました。
2026年の『PHOTO GO / PAPER MATTER Photobook Awards』入選作品。写真を一冊に編む、それぞれの試みが会場に並ぶ。
会場に展示された写真集の試作本。写真の並べ方から製本まで、本という形を探る工夫が見える。
最終日の6月28日には、授賞式が開かれました。賞は二つで、完成した写真集を対象にするものと、試作本を対象にするものです。受賞者には、〈PAPER MATTER〉の工房で制作を続ける機会も用意されていました。
『PHOTO GO』のあと、台北駅付近のアートスペースの〈未命名(Wei Ming Ming)〉にも足を運び、〈楊佳馨(Chia-Shin Yang)〉の作品、『界行者(The Borderwalker)』を見ました。〈楊佳馨〉と『界行者』は、〈Global Interview Project〉の記事でも紹介しています。
台南出身の〈楊佳馨〉は、写真や映像のインスタレーション、アーティストブックなどを通して、身体の経験と記憶を探っています。『界行者』の起点は、幼少期に両親が別居し、二つの家を往復していた経験です。台南の林森(リンセン)地下道を記憶の支点として、街の風景と身体の移動を、写真や音、紙への転写によってたどっています。
〈楊佳馨〉の『界行者』。壁際に転写された街の風景が、二つの家を往復した記憶をたどる。
〈未命名〉は、2022年に台北で、作家たちが自ら立ち上げたスペースです。既存の美術制度の外側にある可能性を探る場です。作家が作品をつくると同時に、それを発表し、他者と関わる場所もつくります。この成り立ちに、『PHOTO GO』で感じた活気や連帯があると感じました。
〈未命名〉での『界行者』の展示風景。壁際を巡る光が、空間にもう一つの輪郭を描く。
今回の訪問では、面白さとともに、ある種の安心感がありました。日本のアートの現場に関わるなかで、活動が制度や既存の枠組みに沿いすぎているのではないかと感じることがあります。何を撮りたいのかと同時に、どこで発表できるのか、どう説明すれば理解されるのかを考えます。その必要を感じながら、窮屈に思うこともあります。これは台湾の制度を断じた話ではなく、日本での経験から持っていた問題意識です。
『PHOTO GO』にも、公募や審査があり、賞があります。名前を知った作家たちも、学校や展覧会など、さまざまな場に関わっています。それでも印象に残ったのは、人が集まり、作品を介して関係をつくっていく動きでした。
作品を前に、向かい合って話す作家と来場者。『PHOTO GO』の会場では、写真を見る時間が対話へと続いていく。
自分が「制度化されすぎていない」と感じたものは、仕組みの有無よりも、そのなかで人がどう関わっているかにありました。
卓を囲む関わりは、三日間の会場だけでは終わっていません。『PHOTO GO』を開いている〈一影像〉(1 IMAGE ART)は、台北や高雄、台南の写真祭、〈国家攝影文化中心〉とも関わってきました。2026年10月9日には、〈国家攝影文化中心〉が『攝影上桌』の名で展覧会を開き、『円卓策展賞』を受けた四人の作家を招きました。独立した交流の場で試された卓の形が、国の写真の機関にも届いています。
写真は、壁の向こうに置かれるだけではなく、人が座る距離まで降りてきて、言葉になり、本になり、次の会場へ渡っていきます。今回の台北で見えたのは、その道筋が、すでに一つのシーンとして動いていることでした。








