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Read Your Photography | 別れは円を描いて | Focus #674

By cizucu · 2026年5月24日

連載『Read Your Photography』
Read Your Photography | 別れは円を描いて | Focus #674

Cover photo by HSU CHIEN HSIAO

Read Your Photography | 別れは円を描いて | Focus #674

Cover photo by HSU CHIEN HSIAO

『Read Your Photography』では、ただ見るだけでは出会えない、写真の裏側にある“物語”に目を向けます。cizucuが主催する〈photo poster project〉や、SNSを通じて集まった作品とともに、その一枚が生まれた背景やその人だけの時間を、cizucuマガジンが12言語に翻訳し、世界中へ届けます。

物語を心にしまっておくのもひとつの選択。けれど、その想いは誰かの心に静かに触れ、まだ見ぬ感動を生むかもしれません。

今回ご紹介するのは、世界中から集まった3名の作品です。
それでは、唯一無二の物語を、そっと覗いてみましょう。

WenYang’s Story

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Photo by WenYang

WenYang

📚 01

バングラデシュのダッカの鉄道駅は、ホーム全体に、彷徨う老人や見捨てられた孤児、そして薬物に溺れる人々があふれていた。私はホームを何度も行き来しながら、興味深い被写体を探していた。

そのとき、二匹の小さな黄色い犬がホームの上で日向ぼっこをしながら昼寝をしているのを見つけた。そこへ、全身が汚れ、裸足の少年が犬たちに近づいていき、しゃがみこんで撫で始めた。すると一匹の子犬が立ち上がり、少年に飛びつき、二つの小さな存在はそのまま抱き合うようになった。

おそらく、その少年には家族もおらず、帰る場所もないのかもしれない。しかし、その二匹の子犬は、決して野良犬ではなかった。

cizucu編集部
過酷な環境の中で交わされる、あまりにも無垢でやわらかな触れ合いに、強く心を揺さぶられる一枚です。少年と子犬が抱き合うその瞬間には、言葉を超えた安心やぬくもりが確かに宿っています。背景に広がる現実の厳しさとは対照的に、この小さな関係性がひとときの救いとして立ち上がる構図が印象的です。生きる場所を持たないかもしれない彼らが、それでも互いに“居場所”となっていることを静かに伝えています。

taitai.chun’s Story

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Photo by taitai.chun

taitai.chun

📚 02

あの日の午後、大きな木の下には、またビニール袋に入れられた靴がいくつか置かれていた。
他の人から見れば、ただの不要品や捨てられるものかもしれない。でも、私にはそれが「言葉にされない優しさ」のように映った。

必要な人がいれば自然と持っていけばいいし、置いた側も「施し」をしているという意識を持つ必要はない。「必要なら持っていってください」というこの営みは何年も続いていて、最も厳しかったコロナ禍の時期でさえ途切れることはなかった。

cizucu編集部
静かな路地に置かれた靴の存在が、声を持たないやさしさとして立ち上がる一枚です。大きな木の根と無造作に並ぶ袋が、都市の中にひっそりと続く“見えない循環”を象徴しているようにも感じられます。誰かのために差し出されながらも、誰のものでもないこの行為は、与える・受け取るの境界を曖昧にし、日常の中にある無言の思いやりを静かに浮かび上がらせています。

HSU CHIEN HSIAO’s Story

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Photo by HSU CHIEN HSIAO

HSU CHIEN HSIAO

📷 SONY α7C
📚 03

台湾の告別の儀式において、「繞棺(棺を巡ること)」は、生者と逝者がこの世で交わす最後の静かな舞いである。

画面の中で、棺は時間の中心に静かに留まり、まるで声なき島のように佇んでいる。一方、順に巡る親族や友人たちは、スローシャッターによって流れゆく残像となって重なっていく。それは生と死が交差する、最もやさしい瞬間である。

ゆっくりとした歩みの中には、語り尽くせない想いが宿っている。私たちはあなたの周りを静かに巡りながら、まるで記憶の回廊の中で、共に過ごした歳月をもう一度辿り直しているかのようだ。流れる人影と、動かぬ棺とが織りなす無言の対話は、命とは本来、絶えず前へと進み続ける旅であることを語っている。生者はやがて再び喧騒の時の流れへと歩み出し、逝者の愛は、私たちの心に永遠の錨として残り続ける。

これは東洋的な哲理に満ちた見送りであると同時に、「別れ」という普遍的な営みに対する、人類共通のやわらかな共鳴でもある。私たちは巡る足取りの中で、この世の執着をそっとほどき、やさしくあなたを送り出す。

cizucu編集部
静止する棺と、その周囲を巡る人々の流れが、時間の二つの層を鮮やかに浮かび上がらせる一枚です。スローシャッターによって重なり合う人影は、個々の存在を超えた「祈り」そのもののようにも感じられます。動かぬ中心と、絶えず巡る周縁。その対比が、生と死のあわいにある静かな対話を生み出し、別れという行為が持つやさしさと普遍性を、深く、そして穏やかに伝えています。

最後に

いかがだったでしょうか。

ビジュアルだけでは語りきれない魅力に、私たちは目を向けていきたい。『Read Your Photography』は、写真の奥にある想いや感情に目を向け、ひとつの物語として受け取るための企画です。

写っているのは、ほんの一瞬です。けれどその奥には、確かに流れ続けてきた時間と、言葉にならなかった感情があります。

どうか写真を読むように、そして頁をめくるように、味わってみてください。

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『Read Your Photography』では、cizucuが主催する〈photo poster project(ppp)〉の出展作品もご紹介しています。

pppは、あなたの国でも開催されているかもしれません。「写真が好き」という気持ちだけで繋がる出会いが、いま世界中に広がっています。

photo poster project

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