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香港の注目クリエイター・Wai Hang Siu が答える「10の質問」| ISSUE #251

By cizucu · 2026年7月13日

連載『グローバルインタビュープロジェクト』
香港の注目クリエイター・Wai Hang Siu が答える「10の質問」| ISSUE #251

©︎ Wai Hang Siu

香港の注目クリエイター・Wai Hang Siu が答える「10の質問」| ISSUE #251

©︎ Wai Hang Siu

独自の視点で写真表現を追求する人物へのインタビューを通じて、創作の原点や思想、制作プロセスを掘り下げ、世界中のフォトグラファー・フォトメディアに新たなインスピレーションを届けます。

香港出身で、現在は英国を拠点に活動するヴィジュアル・アーティスト〈Wai Hang Siu〉さん。
写真を、ただ記録するためのものではなく、存在や記憶、社会の変化を考えるためのものとして見つめています。
暗室での手仕事からデジタルの制作までを行き来しながら、写真というメディアの境界を探り続けるSiuさん。移動、アイデンティティ、記憶、そして歴史をめぐる問いは、作品の中で静かに重なり合います。

今回の「10の質問」を通して、その表現がかたちになるまでのプロセスに迫ります。

Information
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©︎ Wai Hang Siu

Wai Hang Siu

香港出身、現在は英国を拠点に活動するヴィジュアル・アーティスト。写真を記録の道具としてだけでなく、存在を理解するための哲学として捉えている。暗室での手仕事とデジタルの制作を行き来しながら、写真というメディアの境界を探り、歴史、記憶、社会の変化を手がかりに、現実との関係を見つめ直す作品を制作している。

Instagram : @waihangsiu

Q1. あなたの写真の原点と、現在の活動について教えてください。

写真に出会ったのは、香港の中学校に通っていた12歳の頃です。
カメラは、見慣れた景色を少し違う角度から見せてくれました。その後、写真、メディアアート、ファインアートを学ぶ中で、写真はただ写すだけではなく、人の見方や記憶にも深く関わるものだと気づいていきました。

2022年からは英国に拠点を移し、活動の場は欧米へと広がっています。香港で制作した『Clean Hong Kong Action』は、ヒューストンの〈FotoFest〉や英国ダービーの〈FORMAT Festival〉などで発表しました。現在は、移動、アイデンティティ、記憶、写真の物質性、オルタナティブ・プロセスをめぐる新しい作品にも取り組んでいます。

Q2. あなたの作品において、最も大切にしている要素・テーマは何ですか?

私にとって写真は、自分だけの世界を描くための「ペン」のような存在です。
作品の中心にあるのは、移動、アイデンティティ、記憶、そのあり方についてです。けれど、その表現方法はひとつに固定していません。テーマに合わせて、技法やジャンル、展示の方法を変えながら、その問いにいちばん近づける形を探しています。

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©︎ Wai Hang Siu

写真に夢中になればなるほど、写真の限界にも気づかされます。けれど、その限界があるからこそ、写真にしか触れられない断片的な表現やストーリーテリングの深さがある。私はその可能性を探りながら、自分の見ている世界をかたちにしています。

Q3. あなたの作品はどのように生まれますか?直感や偶然、現場での判断など、創作の裏側が知りたいです。

私の作品は、まず撮ることより考えることから始まります。
まずは、心の中にある考えや感覚、方法を長く持ち続けます。調べ、試し、何度も確かめながら、その考えにふさわしい形を探していく。私の制作には、そうした時間が流れています。

『Clean Hong Kong Action』も、最初から作品として始まったわけではありません。2019年、香港の抗議活動の中で撮影した写真は、当時の大きな出来事を自分の記録として残すためのものでした。

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©︎ Wai Hang Siu

けれど現像後、そこに写る人びとの顔を見たとき、そのまま見せることはできないと感じました。試行錯誤の末、写真に写るすべての顔を物理的にくり抜くことにしました。それは人びとの身を守るためであり、同時に、あの時代の感情に応えるための方法でもありました。

Q4. あなたが表現を続ける原動力は何ですか?

表現したいという気持ちは、人がもともと持っているものだと思います。
ある人にとっては文章であり、ある人にとっては料理かもしれない。私にとって、それは写真でした。

世界はとても速く変わっていきます。写真を撮り、作品をつくることは、その変化を理解するための手がかりになります。目に見える現実だけでなく、記憶、信念、知識、哲学のような、かたちのないものにも近づいていくために。

写真は、物理的に存在するものしか写せません。だからこそ、見えないものとどう結びつくのか。その緊張感が、私をつくり続ける場所へと向かわせています。

Q5. お気に入りの一枚を見せてください。その一枚に込めたストーリーや、選んだ理由も知りたいです。

私が選んだ一枚は、『Clean Hong Kong Action』の中の「2019.6.16 Tamar Street, Admiralty」です。

2019年6月16日、香港島の通りをおよそ200万人が埋め尽くした抗議活動の日に撮影しました。道路、広場、歩道橋。そのすべてに人びとが集まり、大きな流れとなって街を進んでいました。
そのとき私は、写真家であると同時に、ひとりの参加者でもありました。歴史の大きな瞬間を、自分の立っている場所から記録したい。その思いでシャッターを切りました。

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©︎ Wai Hang Siu

のちに、写真に写る人びとの顔はすべてくり抜きました。個人を守りながら、そこにあった集合的なエネルギーを残すために。見えなくなった顔の奥に、むしろその場にいた人びとの存在が強く浮かび上がると感じています。

Q6. AI時代に、写真はどんな意味を持つと思いますか?

AIの時代は、写真とは何かをあらためて考えさせてくれると思います。
もし写真を、ただイメージをつくるための方法と捉えるなら、AIやデジタル画像も同じ場所にあるのかもしれません。けれど写真には、現実とつながっているという大切な性質があります。

写真は、記憶や歴史と結びついています。AIがその境界を揺らす今だからこそ、「写真らしさ」とは何かがよりはっきり見えてくる。

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©︎ Wai Hang Siu

私にとって、AIは写真を終わらせるものではありません。むしろ、写真がどこから来て、何を大切にしてきたのかを思い出させる存在なのです。

Q7. 香港のシーンの中で、あなたが「重要だ」と感じる動きやコミュニティは?

私は数年前にイギリスへ移りましたが、今も香港の写真シーンを見つめ続けています。
香港は小さな場所であり、写真のコミュニティも決して大きくはありません。商業写真家やフォトジャーナリストが中心にいる一方で、写真を使って作品をつくるアーティストたちは、それぞれが個人で活動したり、仲間とゆるやかにつながったりしています。

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©︎ Wai Hang Siu

その中で、写真団体やスペースの存在はとても大切でした。けれど近年、助成や会場の支援が止まり、長く活動してきた団体が閉じてしまうこともありました。
だからこそ、作品を見せる場所や、作家を支える仕組みは欠かせません。小さなシーンだからこそ、支え合う場所の意味は大きいと感じています。

Q8. 他国の写真シーンやクリエイターに、興味や刺激を感じることはありますか?

とくにドイツを中心とした西洋の写真表現から大きな影響を受けてきました。
〈Thomas Ruff〉、〈Thomas Demand〉、〈Barbara Probst〉、〈John Hilliard〉。彼らの作品には、写真とは何かを冷静に問い続ける姿勢があります。合理的で、哲学的で、写真というメディアそのものに深く向き合う表現です。

写真の本質を知りたい。その問いは、私自身の制作にもつながっています。写真というものの性質を見つめながら、同時に、自分が扱いたい社会や個人のテーマへと向かっていく。その両方が、作品の土台になっています。

Q9. あなたが人生をかけて追い求めたいことは?

私にとって写真は、世界を広げるための目です。

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©︎ Wai Hang Siu

ただ記録するだけではなく、見えていなかったものに気づき、まだ知らない場所へ連れていってくれるもの。
その目を通して、世界をどこまで広げられるのか。私はその問いを、生涯かけて追い続けたいと思っています。

Q10. 世界中のクリエイターへ、今のあなたから届けたいメッセージをお願いします。

写真は、はじめること自体はとても簡単な道具です。スマートフォンがあれば、誰でもすぐに撮ることができます。
けれど、自分だけの写真にたどり着くことは、とても難しい。毎日、数えきれないほどのイメージが生まれる時代だからこそ、私たちはより深く考え、感じる必要があります。

大切なのは、目の前の現実から、自分だけの世界を見つけること。

私もまだ、その道の途中にいます。長い道のりなので、ゆっくりと焦らず進んでいきましょう。

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